しずおかDX

活動報告

第2回ワークショップ「業務変革の事例」を開催しました。

しずおかDXコンソーシアムによる隔月開催の地域DX推進ワークショップ、第2回「業務変革の事例」が、2021年6月23日(水)、静岡市内の会場とオンラインで同時開催されました。幹事会社である静岡鉄道、静岡銀行、静岡ガスより各社でのDXの取り組み事例が紹介されたあと、それを踏まえた個人ワークとディスカッションが行われました。

目の前にある業務のカイゼンを繰り返していったことが、結果としてDXになっていた。

進行は、本活動を支援する株式会社レッドジャーニー(以下、レッドジャーニー)。

はじめに、今回からの参加となる方もいるため、あらためて任意団体「しずおかDXコンソーシアム」の設立目的や活動の概要を共有。そして、本題に入る前に、今回紹介される三社の事例について、いずれも最初からDXを目的に始められた取り組みではなく、目の前にある業務のカイゼンを繰り返していったことが結果としてDXになっていた、という共通点が示されました。大上段に構えた取り組みではなく足元の業務に取り組んだ結果であり、自組織での取り組みの足掛かりとして活かせるだろうという言葉に期待は高まります。

※しずおかDXコンソーシアムの概要については、こちらを是非ご参照ください。

給与業務のデジタル化 ~RPA導入から将来構想まで~ 静岡鉄道株式会社 主計部業務二課 佐々木 潤様

静岡鉄道株式会社からは、給与業務のデジタル化の事例としてRPA導入について紹介されました。

登壇した主計部業務二課の佐々木様は、RPA導入のきっかけを「人が減ったことと、シンプルな業務=付加価値のない単純作業が発生していたこと」と話します。

結果として削減できた時間は、1年間で1000時間にも及びます。RPAは人の手を必要としないため夜間に作業を行っており、空いた日中の時間を、より付加価値の高い業務のために使えるようになりました。

業務効率化もさることながら、もう一つの成果として強調されたのは、メンバーの発想や意識が変わったことです。

RPA活用による成果に現場のメンバーが確かな手ごたえを感じたことで、
「他にも効率化できることがあるのではないかと意識するようになった」
「他の業務にRPAを活用するにはという視点で業務フローを発想するようになった」
「どんどんアイディアが湧いてくるようになった」
「提案があがるようになった」
という変化があったそうです。チームメンバーの意識変革が起こっており、DXの重要な柱である組織変革への第一歩を着実に踏み出されたことがうかがえます。

「今だからこそ分かった重要な4要素」としては、専門家の支援を得たことまわりを巻き込んだこと上司の理解があったこと最初に構想を練って進めなかったこと、があげられました。

特に、最初に構想を練って進めなかったことについては、一見するとマイナス要素のようですが、とにかく進めていったことでスピード感につながったと振り返っていました。

今後もRPAをどんどん導入していきたい、業務全体の運用フローを見直し、グループ各社にも広めていきたい、と意気込みを語る様子からは、目の前にある業務の見直しを着実に繰り返し、小さな成功を積み重ねた上に培われた確かな自信が感じられました。

RPAの導入・活用には、業務効率化やコスト削減のほか、作業ミスの減少という効果もあったそうです。給与業務のほかにも総務や人事業務では、ルールが確定的で定期的な繰り返しのある作業や、PCのみで完了できるシンプルな作業が多く見られるため、RPAとの親和性が高いと言えます。地方を中心に労働人口が減少の一途をたどるなか、地方企業、特に中小企業においてRPA化はDX推進の大きなカギとなりそうです。

柔軟な働き方を支えるITインフラについて 静岡ガス株式会社 デジタルイノベーション部 ICT企画担当マネージャー 佐藤 貴亮様

静岡ガス株式会社(以下、静岡ガス)からは、柔軟な働き方を支えるITインフラについての事例が紹介されました。

静岡ガスでは、昨年からのコロナ禍によるテレワークの導入をきっかけに、リモートワークのための制度とITインフラの整備の両面で試行錯誤が続いているそうです。佐藤様の所属するデジタルイノベーション部では、2015年頃からITインフラの整備に取り組んでいるそうで、その取り組みについて、デバイスの活用状況、セキュリティ対策、クラウドセキュリティゲートウェイ、EDRの導入の4つの面から説明がありました。

デバイスは、ノートPCiPhoneiPadを使用。デスクトップPCの選択肢も残されつつ、約9割が軽量型のB5サイズノートPCを使用。すべての端末には暗号化や紛失時の遠隔消去の処置が施され、持ち出しが可能になっています。

2018年から社員全員が使用するiPhoneには内線機能が備わっているそう。固定電話は9割削減(部署に1台程度)。コロナ禍となり急遽在宅勤務の必要性に迫られた際も大きな混乱はなかったと言います。

現場での報告とお客様サイン(電子サイン)など主に営業活動に活用されるのがiPad。導入前は、現地で記入した書類を社に持ち帰り、再度端末に入力するという二度手間が生じていましたが、この帰社後の作業がなくなったことで、年間1.8万時間の作業時間を削減できたそう。また、書類を紛失した場合の情報セキュリティ的なリスクも軽減されました。

複数のデバイスを活用する上で、最初の課題となるのがセキュリティ対策。佐藤様からも、「デジタル活用と両輪で必要になるもの」という認識が示されました。

この点では、社内でセキュリティ免許制度が運用されているそう。社内ネットワークを利用するには免許証の取得が条件で、免許取得にも1年ごとの更新にもセキュリティ教育の受講と試験の合格が必須です。

また、今年3月、社内ネットワーク環境の刷新に際して導入されたのがクラウドセキュリティシステム。さらに、日々進化する未知の脅威に対応するためのセキュリティ技術としてEDRを導入し、柔軟な働き方を実現するための前提となるITインフラを下支えしています。

今後について、「より働きやすい環境を実現したい」と語る佐藤様。そのために、クラウドサービスを積極的に活用し、デジタル活用の場面での煩わしさをできる限り軽減するための施策を講じていきたいと話されていました。

また、「デジタルの存在感は日々増している一方で、デジタルだけでは難しいことも多い」とも話されており、これは誰もが感じるところだと思います。お客様との対話では、AIによる均質化された対応を超えて、いかにひとりひとりに最適な対応をしていけるか、デジタルとリアルの融合を模索していく必要があると語られていました。

社員の働き方についても同様に「リアルの大切さ」を実感されているそう。現在は、週2日を在宅勤務、残りの3日を出社するスタイルがメインになっているそうですが、リモートワークの経験を通して、あらためて「リアルとデジタルを融合させることで、時間と場所にとらわれない、より柔軟な働き方を実現したい」という想いを強くされたとか。

リモートワークはコロナ禍を機に大きく広がりました。良い面も多々ある一方で、多くの人があらためて「リアルの大切さ」を実感する大きなきっかけにもなりました。

特に、顧客との繊細で濃密な対話や、多様なライフスタイルに根ざした社員同士のコミュニケーションでは、対面(リアル)特有の言語的・非言語的コミュニケーションが大きな意味を持ちます。デジタルとリアルの融合はDX実現の大きな原動力となりそうです。

コンタクトセンター構築について 株式会社静岡銀行 経営企画部 DX戦略推進室 河合 諒一様

株式会社静岡銀行(以下、静岡銀行)からは、コンタクトセンター構築の事例が紹介されました。経営企画部DX戦略推進室の河合様は、「デジタルとリアルの融合」がテーマと言います。

静岡銀行におけるコンタクトセンターは、従来のコールセンターの高度化の一環であり、対面チャネルと非対面チャネルの接点となる重要なチャネル。来店客数が減少するなどお客様の行動が変化し、ニーズが多様化するなかでお客様との接点も変化してきている現状を踏まえ、日常的な接点(住所変更手続きや振込など)はデジタルへ集約。一方でリアルな場である店舗は、お客様と価値観を共有する特別な場所と位置づけているそうです。

電話だけでなくチャットやビデオ通話など複数の連絡手段が利用できるコンタクトセンターは、お客様の利便性向上、ペーパーレス化による業務効率の向上、応対履歴などのデータ蓄積による情報の効果的な利活用という成果へ結びついています。

今後の課題としては、組織体制現場の理解技術面の課題をあげられていました。

DXの取り組みは、言葉にすると簡単そうでも実際に理解してもらうのは非常に大変です。河合様は、「日々悩んでいる」「成功事例というより課題の多いプロジェクトではあるが、参加したみなさまにとって考えるきっかけとなれば」と話されていました。

デジタルでどうにもならない仕事に生身の人間の時間を費やす。そのためのデジタル化。

三社三様の事例を受けて、講師を務めたレッドジャーニー代表の市谷様は、「今回の事例はいずれも業務のDXであり、新しい事業を作ったり顧客を新しく獲得していくとなるとまた別の話」と前置きをしたうえで、「新しい事業を作る、顧客を獲得するということは結果が分かりやすく目立ちやすいが、その前提として、今やっている業務をカイゼンするところから始めないと難しい。つまり、足元の業務やコミュニケーションから取り組んでいくことで、それを土台として上に積みあがっていくのだ」と話されていました。

図

出典:Biz/Zine 三井不動産DX本部古田氏と語る、推進を加速させた「全社巡業」と「DX2周目の課題」とは https://bizzine.jp/article/detail/5861

「デジタル化は業務の自動化、リアルタイム化、非対面化などを進めるための前提である一方、新しい取り組みをする時間がないという問題に直面することも多い。そのままにしておくと、業務の属人化がどんどん進む、メンバーにとっての仕事のやりがいが見えなくなる、そして、体制が維持できなくなるといった事態に陥る」と市谷様は言います。

そのための方策として提案されたのが「やめることをはじめる」。具体的な施策として

  1. 業務とシステムの洗い出し
  2. かかっている労力の算出
  3. カイゼン施策と工数見立て

があげられました。

市谷様は、「そもそも、デジタル化してどうするの?」と問いかけます。その答えは「もちろん、デジタルでどうにもならない仕事に生身の人間の時間を費やすのです!」。

デジタルでどうにもならない仕事とは、例えば、顧客との対話や新規事業づくりなど。顧客との間や組織内コミュニケーションを「丁寧につなぎ理解し合うためには対話が大切」であり、「そこに時間をさけるようにデジタル化を進める」のです。

後半は、個人ワークとグループに分かれてのディスカッション。

個人ワークでは、紹介された事例および市谷様からの話を踏まえて、手元に配られたシートに沿って書き出していきます。市谷様とはオンラインでつながっており、質問は随時OK。10分間の個人ワークの後、グループに分かれてのディスカッションが行われました。

まずは個人ワークで頭の中を整理します。

グループディスカッションが始まりました。

少人数グループでのディスカッション。講師への質問も随時OK。

次回、第3回ワークショップは8月頃の開催予定。

次回、第3回ワークショップは8月頃の開催予定です。日程や内容など、詳細はイベント情報のページにてご確認ください。

 

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