しずおかDX

活動報告

第3回ワークショップ「DX戦略マトリックスを考える」を開催しました。

しずおかDXコンソーシアムによる隔月開催の地域DX推進ワークショップ、第3回「DX戦略マトリックスを考える」が、2021年8月19日(木)、オンラインで開催されました。当初は静岡市内の会場と同時開催の予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を鑑みオンラインのみでの開催となりました。

進行:静岡鉄道株式会社(以下、静岡鉄道)
講師:株式会社レッドジャーニー(以下、レッドジャーニー) 市谷聡啓様

DX、何から考えていけばいいのか?という課題感

あらためて任意団体「しずおかDXコンソーシアム」の設立目的や活動の概要が共有されたあと、講師による講義「DX戦略マトリックスを用いて方向性を決める」がスタート。

※しずおかDXコンソーシアムの概要については、こちらを是非ご参照ください。

講師の市谷様は、代表を務めるレッドジャーニーで様々な業界のDXを支援されています。また、株式会社リコーでは組織の中に入り、社内グループのDX推進に取り組まれています。

DXに関する情報は確実に増えた一方で、「自社として、何をするのか?」という課題感が多くの組織において見られる、と市谷様。例えば、アナログでやっている業務をデジタル化したり、チャットなどのツールを導入したり、スマホから社内データにアクセス可能にしたり、新規事業を立ち上げたりと、切り口は様々あるものの、自社に目を向けると何から考えていけばいいのかが判然とせず、取り組みが進みづらい現状があると言います。

そこで、具体的な一歩を考える手立てとなるのが「DX戦略マトリックス」。そもそも何をどの方向に向かって始めていくのか、DXをどう始めていくのかということをより具体的に考えることが、今回のテーマとして掲げられました。

DXとは、組織自体を作り変えること。

2018年、経済産業省により発表されたDXの定義は、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確保すること。

つまり、環境の変化がトリガーとなって組織が「提供価値の変革」「組織の変革」という2つの変革を起こすためのものである、と市谷様は言います。DXとは提供価値 (製品、サービス、ビジネスモデル) ⾃体を変えるとともに、組織の体制、プロセス、⽂化そのものを変えることであり、組織と社会の接点、組織の内側まで変えることに他ならない。DXとは、組織⾃体を作り変えることと言えるわけです。

経済産業省「DX認定制度」を道標に。

では、組織をどのように作り変えるのか。その道標となりうるのが、経済産業省による「DX認定制度」です。DXの準備ができているかどうか(DX-Ready)を国が認定する制度で、個人事業主でも法人でも、すべての事業者が対象となっています。

参考:経済産業省ホームページ DX認定制度について
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html

認定の基準として6つの項目が定められており、これらについて自社として考え、社内外で公開し、全社的に取り組んでいることを証明することが認定のポイントとなります。認定制度の取得自体は難しいことではない、と市谷様は言います。むしろ、取得準備を進める過程で自ずと自社のDXへの解像度が上がることに意味があり、そこで役立つのがDX戦略マトリックスなのです。

出典:経済産業省 DX認定制度の概要及び申請のポイントについて https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/0806_dx-certification_point.pdf

出典:経済産業省 DX認定制度の概要及び申請のポイントについて https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/0806_dx-certification_point.pdf

2つの軸に沿って視点をスライドし新たな施策を見出す、DX戦略マトリックス。

さて、DX戦略マトリックスとはどのようなものでしょうか。図のように、2つの軸に基づき事業の不確実性のレベルを4段階で区分します。元となったのは「アンゾフの成長マトリックス」。より焦点をしぼり深化させることで、具体的なDXの取り組みにつながりやすくしているのが特徴です。

出典:Biz/Zine 三井不動産DX本部古田氏と語る、推進を加速させた「全社巡業」と「DX2周目の課題」とは https://bizzine.jp/article/detail/5861

講義では、DX戦略マトリックスを用いてDX銘柄2021と中堅・中小企業、地方の事例が紹介されました。印象的だったのは、足元の業務カイゼンからDXへつながっていった事例が多く見られたこと。マトリックスでいうと、既存顧客×既存事業という不確実性の最も低いところから多くの取り組みが始まっています。

やろうと思えばすぐにでも実現可能な(でも、今まではしていなかった)地道な取り組みが、やがて新たな価値やビジネスモデルを生み出し、組織変革へと展開していく。DX戦略マトリックスというスケールを活用することで「何から考えていけばいいのか?」の壁を乗り越え、一歩踏み出すことができそうです。

限られたリソースで自社のDXを推進するには。

後半のワークショップでは、個人ワークとグループディスカッション、発表が行われました。DX戦略マトリックスに基づいて、それぞれ自社での取り組みと課題を考えていきます。はじめに共有されたテーマの通り、前回、前々回と比べるとより具体的なところに踏み込んだ内容であり、参加者様は真剣に取り組まれていました。

発表を受けて後半の講義では、ゴールデン・サークルDX戦略マトリックスを行きつ戻りつするDXの運営方法として、アジャイルスクラム仮説検証の考え方が紹介されました。すべての施策を一度に進めることは困難なため、折に触れてゴールデン・サークルに立ち戻り、方向性を定め、戦略を練り、仮説を立てて検証しフィードバックを得る。組織、チームでこれらを繰り返しながら事業を進めていく方法です。

これらは元々ソフトウェア開発のために生み出された方法で、DXへ応用するには一工夫が必要だと言います。「静岡市中小企業アクセラレーションDX支援事業」では、DXの構想から内容の検討、運営、アジャイルの進め方をレッドジャーニーが支援することになっており、最初の取りかかりとして活用してほしいと市谷様(現在は募集が終了しています)。次回以降のワークショップでは、戦略を実務へどのように落とし込んでいくのか、アジャイルを活用したDXの進め方、取り組み方について学んでいきます。

参考:静岡市中小企業アクセラレーションDX支援業務の参加企業の募集について
https://www.city.shizuoka.lg.jp/805_000001_00155.html

次回、第4回ワークショップは10月28日開催予定。

次回、第4回ワークショップは10月28日の開催予定です。日程や内容など、詳細はイベント情報のページにてご確認ください。

 

この記事をシェアする