しずおかDX

活動報告

2022年7月勉強会「DX時代を生き抜くマインド」を開催しました(ゲスト:ワークスタイル&組織開発専門家、あまねキャリア株式会社代表取締役CEO 沢渡あまね様)

2022年7月27日、勉強会「DX時代を生き抜くマインド」を静岡市内の会場およびオンラインにて開催しました。

進行:静岡鉄道株式会社(以下、静岡鉄道)
講師:株式会社レッドジャーニー(以下、レッドジャーニー) 市谷聡啓様
ゲストスピーカー:ワークスタイル&組織開発専門家、あまねキャリア株式会社 代表取締役CEO 沢渡あまね様

【内容】

  1. 【講演】地方都市/レガシー企業が抱える課題とその処方箋
    ~未来志向で組織の景色と、はたらく景色を変える~
  2. 【特別対談】DX時代を生き抜くマインド――未来志向と越境思考(Q&A含む)
  3. ワークショップ
    個人ワーク、グループディスカッション、全体共有

【講演】地方都市/レガシー企業が抱える課題とその処方箋
~未来志向で組織の景色と、はたらく景色を変える~

話し手

沢渡さまお写真1.jpg

沢渡あまね様

作家/ワークスタイル&組織開発専門家。『組織変革Lab』主宰。
DX白書2023 有識者委員。
あまねキャリア 代表取締役CEO/なないろのはな 取締役・浜松ワークスタイルLab 所長/NOKIOO 顧問ほか。浜松/東京二重生活。
これまで400以上の組織のカイゼン・改革を支援。尊敬する人:兼好法師。
・あまねキャリア新オフィス 三ヶ日ワーケーションオフィス
・長島ダム ダム際ワーキングスポット

地方都市/レガシー組織の問題地図

浜松で暮らし仕事をするようになって、あらためて地方都市の抱える諸問題が見えてきました。書籍『新時代を生き抜く越境思考』のなかで、それらを「地方都市/レガシー組織の問題地図」として一枚の地図にしました。これからお話する「変わらなければいけないのに、なかなか変われない」というレガシー組織の問題は、地方都市だけではなく大都市圏にも共通します。

1.「地方だから」「製造業だから」

地方だから」「製造業だから」と言い訳をして、仕事がつらくても、給料が上がらなくても、テレワークやデジタル化が進まなくても仕方がないと諦めていませんか。

2.横並び主義

今年、浜松の企業101社にインタビューをしたところ、テレワークを定常的に取り入れている企業は5%以下にとどまりました。製造業ではテレワークは難しいと思われるかもしれませんが、仕事を細かく分解すれば、テレワークでも十分対応できる部分があるはずです。

目的はテレワーク自体ではなく、新しい利益創出モデルや、雇用モデルの実現です。仕事やコミュニケーションにデジタルツールを活用することで、育児や介護などの制約により今までは活躍できていなかった人たちが、正しく能力を発揮できるようになります。それをすでに実現している企業がある一方で、デジタルワークの第一歩であるテレワークですら5%以下しか導入できていないという事実は情けなく感じます。その背景には、「横並び主義」のもと問題を見てみぬふりをして、「みんな同じ」にしようとする固定的な勤務体系や価値観などがあるのではないでしょうか。

3.悪気ない下請け思考

下請けが悪いと言いたいのではありません。言われたことをきちんとやって利益を上げることは素晴らしいことですが、それしか経験していないと、新しいことを考えたり、自分たちで問いを立てて問題や課題に名前をつけ、組織の内外を駆けまわって繋がりをつくり、ディスカッションをして答えを出すという経験ができません。そのような状態でトランスフォーメーションが必要だと言われても、理解が難しいでしょう。経験がなければ進め方がわからず恐怖心を感じるのも当然です。経営側の描くミッションと、現場のキャパシティとのギャップが開いた状態から、いかにしてトランスフォーメーションしていくのか、議論が必要です。

4.前時代的&画一的な地域インフラ

今日の会場(静岡市 コ・クリエーションスペースCOCODE )のようなワークスペースは素晴らしいと思います。他地域や様々な会社から来た人たちがフルに仕事をする「居場所」ができますし、地域の方にとっても、いつもと違うワークスペースは集中力や新しいアイデアの源となります。多様なバックグラウンドと知識、熱量を持つ人たちが集まって、同じテーマに共感し盛り上がれる場所は、地域を活性化し、先進的な人材をひきつけるはずです。

5.職種の定義や仕事のやり方が(悪気なく)古い

経営者の方から「新しい売り方や新しい稼ぎ方を考えていきたい」「その片腕になるような人がほしい」「いい人が集まらない」という話をよく聞きます。この場合、「製造現場」「事務職」「営業」などの職種で募集しても能力が高くやる気のある優秀な人材には響きません。名前の付け方(言葉選び)はとても大事で、職種の定義が古いままでは魅力的な仕事は生まれません。例えば「ビジネスデザイナー」「マーケター」など新しい職種を定義することで、新しい人材を募るだけでなく、もとからいる人達も新しい学びや交流の機会が得られ、越境しながら、より前向きにキャリアパスを描けるようになります。

6.井の中の蛙

変わり映えしないメンバーで毎日同じように仕事をしていては自浄作用が働かず、問題や理不尽さに気づかないばかりか疑問を放置してしまいかねません。越境や変革、スキルアップ、リスキリングへの投資は、ガバナンスやコンプライアンスを健全化する取り組みの一つです。最近では、経済産業省や総務省も、人的資本経営(人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方)というキーワードを掲げています。上場企業を中心に、財務情報以外の観点で企業の価値が評価されるようになっていますし、経営幹部がアンラーニングやリスキリングにいかに投資しているかという観点から、企業の健全性や成長度合いを図ろうとする動きも世界的に高まっています。「いかに越境するプロセスをつくっていくか」という観点は、今後より問われるでしょう。

7.見えないものを評価しない、お金を出さない

人的資本経営の流れのなか、大企業は人の育成にどんどん投資しています。ある上場企業では中核人材に3年間で60万円投資すると発表していますが、一方で浜松地域の企業にヒアリングしてみると、人材への投資は中堅企業でも年間で1万円以下、場合によっては0円というケースもあります。この格差が5年後、10年後、ひいては20年後の地域や業界の格差につながると思うと、非常に恐ろしいと感じます。地域企業に対して、ITや育成など見えないものに投資することの妥当性を説き、後押しすることのできる金融機関が増えるよう願っています。

8.他地域から来る人を遠ざける

今、都市部の大企業ではバーチャル化が進み、居住地にかかわらずリモートで働ける環境が整いつつあります。地域の企業に属しながら、複業で働く人も増えています。「地域で新しいチャレンジをしたい」「地域に貢献したい」という思いをもつ都市部からの移住者は、地域企業にとって大きなチャンスです。デジタルで変革を起こそうとするDXの流れをうまく利用して、閉鎖的な環境に風穴をあけ、明るい未来をつくっていってほしいと思います。

景色を変えれば組織は変わる(景色変えていこうぜ!)

私の書籍『バリューサイクル・マネジメント』のなかで「健全な組織のバリューサイクル」という絵を描きました。

DXのゴールはビジネスモデル変革です。ビジネスモデル変革に興味がない社長は恐らくいないと思いますが、現場では成長実感や業務改善、育成・学習という言葉に、より関心が集まるかもしれません。言葉を置き換えながら、経営も現場も景色を合わせていくことが大事です。

また、労働人口に限りがある今、問題を解決するには組織や地域を越えた取り組みが必要です。そのために3つの決別が必要です。

  1. 事務間接業務との決別
  2. 流動性のない社会構造・組織構造からの決別
  3. 「仕事は苦しいもの」という呪縛からの決別

ダイバーシティ&インクルージョンから一歩進んで、ダイバーシティ&エンパワーメントが必要です。今までとは異なる特性・属性・行動パターンの人が答えを持っている時代です。やる気や能力のある人たちに正しくエンパワーメントすることで、新たな「勝ちパターン」が生まれます。景色を変えれば、人の意識は変わります。意識を変えれば組織が変わります。みんなで景色を変えていきましょう。

【特別対談】DX時代を生き抜くマインド――未来志向と越境思考

「ものづくり型」勝ちパターンの成功体験を手放そう

司会:まずは、市谷さんから沢渡さんへ、今回の講演の感想をいただければと思います。

市谷聡啓様(以下、敬称略):沢渡さんのお話から、いつも元気をいただいています。ありがとうございます。

「地方都市/レガシー組織の問題地図」は圧巻ですね。共感とともに拝見しました。下流にある大きな課題を直接どうにかしようとすると行き詰まってしまいそうですが、それぞれの源流を辿り、おおもとの状況にアプローチすることで、もしかしたらオセロのようにすべてがひっくり返ることもあるかもしれないという希望が見えた気がしました。

とはいえ、源流にあたる課題もそれぞれ手強いですよね。これらの課題に、どこからどのように向き合っていけばいいのでしょうか?

沢渡あまね様(以下、敬称略):前提となっているのは、この50〜60年にわたって日本の産業を支えてきた、特に「ものづくり」の勝ちパターンで、強烈な成功体験として息づいています。決められたものを量産する「ものづくり型」「ハードウェア型」の考え方と、新しいものを生み出す「ソフトウェア型」の考え方とは、共存しようにも相性が悪すぎます。今まで合理的とされてきた各種制度や組織カルチャーを維持したままでの新規ビジネスモデル創出やトランスフォーメーションの実現は、いわゆる「無理ゲー」であるという共感形成がまずは必要です。

「両利きの経営」という言葉があります。市谷さんは、書籍「組織を芯からアジャイルにする」のなかで「探索」という言葉を使われていますが、「探索」はクロスファンクション、つまり広くいろんな人や知識と出会い、そこから得たものを取り入れながら新しいイノベーションを起こしていく、今までとは違う方法です。

DXは、この「探索」の領域(未知の領域)で起こります。単一組織では起こりにくい新たな勝ちパターンを生むような事業を、既存の事業と両立させていく必要がある、と「両利きの経営」では提唱しているわけです。

多くの日本の組織は、従来の「ものづくり型」の成功体験の強烈さゆえに、マイクロマネジメントに偏りがちです。マイクロマネジメントには合理的な面もありますが、DXとは相性が良くありません。目先の成果に捉われすぎず、中長期的に変化を育てながら、新たな勝ちパターンを生んでいく必要があります。経営者にとって変革が重要であることは言うまでもありません。現場の私たちも、誠心誠意ディスカッションをして、新しい働き方のスタイルに慣れていきましょう。

単独部署では解決しきれない問題が増えている

市谷:従来の勝ちパターンも、恐らく一生懸命に磨かれてきた賜物なのだと思います。新しいイノベーションを起こそうとチャレンジする動きが進むなかで、通用しなくなった旧来の勝ちパターンを新しく定義し直そうとする動きが自ずと促されていくはずです。どんどん進むことを願っています。

沢渡:解決したいテーマを一部署で抱えこまず、どんどん越境をしてほしいと思います。世の中のテーマは複雑化し、一部門だけでは解決が難しくなっているからです。

恐らくどの企業でも課題となっているであろう「採用・定着」を例にとると、例えば、旧態依然とした仕事の進め方に成長の可能性を感じられず離職が進んでいるのであれば、原因は社内ITにあり、情報システムの領域に重なります。また、良くないオフィス環境が定着率を下げているのであれば、総務の領域が絡んでくるでしょう。いずれにしても、人事部単独では解決しきれません。率先して越境し、複数の能力と知力を持ち寄って解決していかなければ、DXを成し遂げることはできません。DXの流れをうまく利用し、どんどん越権して行動していけばいいと思います。

市谷:一部署だけでは解決しきれない問題が増えている事実に、気づいていないことも多いように思います。

沢渡「今までの当たり前をまず疑う」ことを前提にしなければ、破壊的イノベーションは到底起こせません。これからの組織は、今までの組織体系ではできなかったことを越境して実現し、新しい価値を生み出せる人を育成しなくてはなりません。人的資本経営やデジタルトランスフォーメーションといった時代の流れを追い風にして、理解者や共感者、スポンサーを巻き込みながら、今までの仕組みを「ぶっ壊す」経験ができるといいですよね。

「抵抗勢力」をどう味方につけるか

司会:革新が求められる部門では変化が進む一方で、既存の事業部門や管理部門が「抵抗勢力」のようになることがあると思います。想定通り進まなかったり失敗したりしたときに、遠巻きに傍観している人たちが「それみたことか」という否定的な反応をすることで、変革しようとする側の心が折れてしまう。そういう事態を突破し、さらに変革を推進するにはどうしたらいいのでしょうか?

沢渡:戦略は大きく二つあると思います。一つ目は、チャレンジすること自体に価値があると声をあげ社内世論を形成すること。そのためにはトップを味方につける必要があります。日本の組織はまだまだヒエラルキーが強いので、経営陣や部門長と積極的に対話をして味方になってもらえるといいと思います。トップがトランスフォーメーションに本気なら、失敗を恐れずチャレンジすることを評価するでしょう。現場の声を届けることで味方になってくれる可能性は十分にあります。対話をし、チャレンジする背中を押してくれるようなメッセージを発信してもらいましょう。

二つ目は巻き込むことです。新しいチャレンジに冷ややかな目を向ける保守派のベテランには、協力を持ちかけ巻き込んでしまいましょう。巻き込まれればやらざるを得なくなりますし、自分の知識が活きる経験や新たな能力の獲得を心地よく感じれば、その人は抵抗勢力ではなくなるはずです。

変革に大事なのは成長体験と快感体験です。「この人たちと仕事をしたら自分が成長した」という成長体験は快感をもたらし、チームへのエンゲージメントが高まります。「体験してみたら既存の業務がすごく楽になった」「前の状態には戻れない」というのも快感体験です。新しい経験を通して成長体験と快感体験を生み出せるショールームのような場づくりは、時間はかかっても、ファンを増やしブランド価値を高めるという大事な意味を持っていると思います。

クロスファンクションで成果をあげるには?

司会:既存の業務をこなすことが目的であれば単一部門で取り組む方がスピードは速いと思いますが、新しいことや業務改善、変革には複数の部門による協業が不可欠ですから、その場合、自ずとスピードは落ちてしまうものでしょうか?

沢渡:扱うテーマやメンバー、ファシリテーターのタイプやスキルにもよりますが、スピードが上がることもあると思います。経験したことのないテーマには答えもありませんから、興味を寄せる人が少なく、限られた人のあいだで話が進むと、ものすごいスピードで回ることがあります。

クロスファンクションで仕事をした経験がなければ、当然スピードが遅くなる場合もあります。スピードを上げるためには、一度ふりかえりをして長期戦を覚悟した上で、原因にアプローチするための議論に取り組んでほしいと思います。大手企業のなかにはクロスファンクションで成果を出すためのファシリテーターを育成しているところもあります。中長期的に組織変革を実現するためには、こういった経営判断も大事だと実感しています。

司会:参加者の方からのご質問です。縦割り組織の弊害の打ち破り方(役割の押しつけ合いの解消、理解の醸成など)を教えていただきたいとのことですが、いかがでしょうか?

沢渡:一つは、経営課題としてトップダウンでオーソライズすること。もう一つは、そのテーマを切り出して有志による単独プロジェクト化してみることです。実際にうまくいっている事例があります。有志を募るには、現場のメンバーにヒアリングをしたり、プロジェクトへの参加意義を組織長にかけあい、人材育成の名目でメンバーを送り出してもらったりという方法があります。対話と大義名分が大事です。

未来志向の定義とは?

参加者:地域の中小企業の経営者と接する機会が多いのですが、変革の必要性は重く受けとめている一方で、「変革後に何をしたいのか?」という問いには明確な答えが出せないことが多いと感じます。冒頭でお話されていた「未来志向」というキーワードの定義を、あらためてお聞きできたらと思います。

沢渡私の思う未来志向とは、「健全な組織のバリューサイクル」がうまく回り、週5日×8時間も働かなくても今まで以上の稼ぎを得られる仕組みを作ることでしょうか。これって最高だと思いませんか?ITを活用し、浮いた時間を家族や自分のために使うことができたら幸せです。これが変革だと思うんですよね。様々な事情を抱え働き方に制約があっても、「成長したい」と願う人が正しく活躍できる社会が真のダイバーシティ&インクルージョンと言えるのではないでしょうか。経営者の方には「地方都市/レガシー組織の問題地図」を参考に、「どこから手を付けていきたいのか」を現場の皆さんとディスカッションし、景色を合わせてほしいです。

市谷:私は、「今やっていることが何処に辿りつくのか?」を想像することかなと思います。例えば、一年後どうなっているのか?三年後はどうか?変わらなくても幸せならそれでもいいと思いますが、変わりたいと願うのであれば、今の時点から変えられること、始められることを考えていくことが健全だと思います。そういうことができるかどうかが一番大事じゃないでしょうか。

「どこに辿りつきたいか?」という問いはなかなか難しく、明確な答えがないことも多いと思いますが、「このままで本当にいいのか?」と、常に自分に問いかける仕組みが自分のなかにあれば、どこかでいい具合に辿りつけるかもしれません。

沢渡:ある土木建築の会社では、地方にいながら東京以上の働き方と稼ぎ方をつくるというビジョンを掲げ、あらゆる改革に取り組んでいます。人材育成への投資やITを使った「リモートワーク親方」の導入など、実際にビジョンを実現しつつあります。

市谷:経験や情報が不足しているために次の絵が描けないのだとしたら、他の人との対話や違う領域への越境など何らかを新たに取り入れる必要があるのではないでしょうか。

沢渡:いろんな働き方や考え方の存在を知るだけでも全然違いますからね。

上層部を動かすには、軍師のような策略のスキルも必要

参加者:デジタル化を推進する部署の職員として、トップダウンの力に期待できない場合にどんな工夫ができるでしょうか?

沢渡:新しいテーマに派手な名前をつけて、組織内外から共感者を集めてみるのはどうでしょうか。応援してくれる人がいれば、道ができていくと思います。

市谷:私も、旗印のようなものを敢えて掲げた方がいいだろうと思います。「ダム際ワーキング」という言葉はすごくいいですよね。惹きつけられます。

沢渡:真面目なアプローチとしては、目指すゴール、阻害要因、期待役割の三つの絵を描いてみて、そこから周りに味方を見つけていくといいと思います。

司会:こんな質問もいただいています。紙と会議ばかりの時代を生き抜いてきた(仕事の進め方が古い)幹部クラスの人たちと、DXのベクトルを揃えるにはどうしたらいいのでしょうか?

沢渡:まずは未来目線での問題提起をしてみましょう。仕事の進め方を今のまま続けることにより起こりうる問題として、成長実感の欠如による離職率の上昇や、無駄な仕事に時間を費やすことでプロフェッショナルな人材が育たないことなど、「健全な組織のバリューサイクル」の図をもとに様々な提言ができると思います。

大企業のなかでも変わり始めているところでは、IT部門以外の部門が現場でデジタルツールを使いこなし、管理職を鼓舞しながら半ば強制的に変革を進めています。変革が進めば、気合根性型のアナログな管理職もファンになってくれることがあります。自分たちの気分があがる環境や言葉を自分たちでつくることが大事です。大河ドラマに登場する軍師のように、策士になりましょう。

変革がうまくいかない企業の共通点は、経営と現場の対話不足

司会:今日のようなお話を聞く機会を全社で取り入れたいと思いますが、業務多忙のため実現が難しいです。効果的に時間やイベントをつくる方法を教えてください、という質問をいただいていますが、いかがでしょうか?

沢渡:全社単位でのキックオフイベントなどにビルトインするのが一番いい方法です。管理職研修への組み込みもいいと思います。

司会:沢渡さんのお話のなかで印象的なのが、まず現場レベルで何ができるかを考え、そのためにトップを動かすという視点です。

沢渡:トップにはトップの役割がありますから、現場のすべては見られません。トップはスポンサーになってくれればいいんです。現場で感じるリアリティや未来に対する正しい危機感に共感してもらい、スポンサーになってもらう。そして、越境しながら小さいことから自分たちで取り組み成功体験を積み重ねることが大事です。

司会:変革に前向きな経営者でも、現場の視点から見ると方向性がずれていることがあると思います。そういう場合は、どう対処すればいいのでしょうか?

沢渡:変革がうまくいかない企業の共通点は、経営と現場の対話不足です。対話してください。

司会:今日はありがとうございました。最後に、一歩踏み出そうとする皆さんへ、おふたりからメッセージをいただけたらと思います。

沢渡:周りの「変わらない人」も一緒に、ぜひ一度組織変革Lab.においでください。自分の問題意識や成長テーマに素直になって、それを発信し、社内外に味方を見つけていってほしいと思います。

市谷:一歩を踏み出すためには、空気を読まないことも必要です。忖度する先が多すぎると大変です。それで孤独感やつらさを感じたときは、組織内外で一緒に取り組み分かち合えるような仲間を見つけていくことで支えあえるのではないでしょうか。

【ワーク】講演への感想と気づき、自身が実行したい「DXの一歩目」は何か?

ワークシートに基づいて個人ワークを行ったあと、グループディスカッション、全体共有を行いました。

次回以降のイベント開催予定

勉強会の開催予定については、こちらのページをご覧ください。

関連情報

静岡県/オープンデータハッカソン2022が行われました (pref.shizuoka.jp)

 

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