しずおかDX

活動報告

第4回ワークショップ「DXの出発点を確かめる」を開催しました。

しずおかDXコンソーシアムによる隔月開催の地域DX推進ワークショップ、第4回「DXの出発点を確かめる」が、2021年10月28日(木)、静岡市内の会場とオンラインで同時開催されました。

進行:静岡鉄道株式会社(以下、静岡鉄道)
講師:株式会社レッドジャーニー(以下、レッドジャーニー) 市谷聡啓様

現状を踏まえて未来をみる「事業再定義キャンバス」

今年4月から隔月で開催されてきたワークショップも、折り返し地点となる4回目。DXの進め方や考え方を講義とワークで学んできましたが、今回はこれまでの学びをもとに自社(自組織)でのDXを具体的にどう進めていくのか、目的や進め方、次の一手を明らかにしていただくことを狙いとして、前後編の2部構成でワークが行われました

前回までの内容を踏まえつつ、今回のワークとワークで使用する「事業再定義キャンバス」について講師の市谷様から説明が「事業再定義キャンバス」は、描きこむことで「現状を踏まえて未来をみる」ことができるツール。大きく左右に分かれており、右側は対象とする顧客について、左側は自分たちについて描きこめるようになっています。さらに小さく分けられた項目についてそれぞれ言語化し、可視化されたキャンバスをチームで共有することで、事業に取り組むメンバーの意識付けや行動の指針とすることができます。

「現状をまず捉え、それに対して何をするかを次に考える。コロナ禍という大きな環境の変化によって新規事業開発のあり方が前提から覆された今、その現状を捉え直した上で今後必要なものを見極めることが必要である」と市谷様。ポイントは、顧客が環境の変化とともに「イマ」何をのぞみ、何をしているか、どれだけ具体的に把握できているか、です。さらに、そこから提供側としての自社(自組織)にまで考えを巡らせることで、独りよがりではない実質的な取り組みへと繋げていくことができます。

ワーク1:対象者(顧客)について考える。

前半のワークでは、キャンバスの右側、対象者(顧客)について描いていきます。すべての項目を埋めるには時間が限られているため、「状況」「欲求」「現状の行動」「課題」(顕在・潜在)の四項目を順に埋めていきます。

対象者(顧客)はどのような状況にあるのか、言わば対象者を特定するための条件を考えたあと、顧客が抱えるニーズは何か?顧客が欲していることを想像して描きこんでいきます。次に、顧客は今何をしているか?顧客はニーズを満たすために何をしているか?具体的な行動を想像しながら描きこみます。

「実際に描いてみると顧客のことをあまり分かっていなかったと気づくことはよくある」と市谷様。そもそも顧客が誰なのか?が曖昧だと深く描くことが難しいそう。例えば、目の前で買ってくれる方だけが顧客とは限らず、その場合は最終的な顧客(エンドユーザー)が誰なのか?そこでは何が求められているのか?を考える必要があるのです。

ワーク2:提供側(自分)について考える。

前半のワークで描きこんだ内容をもとに、次は提供側である自社(自組織)の「提案価値」を考えます。

こちら側から顧客に提供する価値とは何か(能力的価値)。そして、課題を解決し、結果としてニーズを満たすためにこちら側が提供することは何になるか(意味的価値)。課題は解決したものの本質的な欲求(ニーズ)は満たされていないということもあり得るため、能力的価値(何ができるようになるのか)と意味的価値(それはどんな意味をもたらすのか)を分けて考えていきます。

「ここまでで描きこんだ 状況→欲求→現状の行動→課題→提案価値 の整合性が取れているかどうかを確認しましょう」と市谷様。違和感がある場合は、ずれている箇所について再度考えてみます。

次に描くのは対象側(顧客)の「未来の状況」です。課題解決されることで将来的にどういう状況になるか。提案価値によって顧客の未来はどのように変わるのか。対象者の新たな価値観、スタイル、未来の状況はどのようなものか。先々で起こる理想の状況について考えます。

「課題解決で終わってしまうとビジネスとして広がりがなくなる。少し抽象的だが未来の状況まで含めて考えることで、課題をより広い視野で捉えることができる」と市谷様。今現在目の前にある課題に対して一定の価値を提供できている場合も、そこで思考停止することなく顧客についてより深く考え、捉えきれていない部分を可視化することが大切です。

続いて「提供側(自社)のミッション」について考えます。ミッションから先に考えがちかもしれませんが、顧客側の状況、視点から捉え直すことでより実情に即したミッションを見出すことができるはずです。

グループワーク:ディスカッションと全体共有

グループワークは、会場とオンライン(Zoom)それぞれに4人程度のグループに分かれて行われました(Zoomはブレイクアウトルームを利用)。その後、代表して1名(一社)の参加者様から全体共有をしていただきました。

市谷様からは「キャンバスはこれ一つですごいことが起こるわけではなく、現状の可視化を試みることであらためて気づくその難しさが、次の一手への手がかりとなる」とのお話がありました。描ききれない、分からないからこそ、自分たちは何が分かっていないのか?まずは顧客の状況を知ろうという次の行動に繋がるのです。

また、キャンバスがスムーズに埋められた場合でも、初期段階では提供側の思惑が多く入った「仮説」であるため、やはり顧客に確かめることが必要です。

つまり、事業再定義キャンバスの目的は項目を埋めることではなく、描いたものを仮説として、それを確かめるため顧客と対話するという次の行動に繋げることにあります。

市谷様が支援する企業や組織では、事業再定義キャンバスを繰り返し何度も描くと言います。最初に描いたもので完結するわけでは決してなく、想像で描いた部分を顧客のリアルな声をもとにアップデートしていくそう。キャンバスを前に机上で再考を深めるよりも、顧客のリアルな反応をみてブラッシュアップし、また仮説を立て直して再度顧客にあたってみる。この繰り返しのサイクルにこそ、事業再定義キャンバスの一番の意義があるのです。

次回、第5回ワークショップは12月16日開催予定。

次回、第5回ワークショップは12月16日の開催予定です。日程や内容など、詳細はイベント情報のページにてご確認ください。

 

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