しずおかDX

活動報告

第6回ワークショップ「ビジネスモデルの変革」を開催しました。

しずおかDXコンソーシアムによる隔月開催の地域DX推進ワークショップ、第6回「ビジネスモデルの変革」が、2022年2月17日(木)、オンラインで開催されました。当初は静岡市内の会場と同時開催の予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を鑑みオンラインのみでの開催となりました。

進行:静岡鉄道株式会社(以下、静岡鉄道)
講師:株式会社レッドジャーニー(以下、レッドジャーニー) 市谷聡啓様
講演:株式会社竹屋旅館 代表取締役 竹内佑騎様

ビジネスモデルの変革

今回は、静岡市清水区に本社をおく株式会社竹屋旅館(以下、竹屋旅館)  代表取締役社長の竹内佑騎様(以下、竹内社長)をお招きし、社長主導で進めてこられた新規事業への取り組みについて、具体的な内容や気づきなどをお話いただきました。タイトルは「ビジネスモデルの変革について」竹屋旅館は1949年に創業し、ホテルクエスト清水を始めとするホテル旅館運営を主事業としています。竹内社長は2015年に4代目として就任されました。

事業承継は第二創業

先代と対話を重ねながら、あらためて経営を学んだ竹内社長。そこで出会ったのが『事業承継は第二創業である』という言葉でした。自ら事業を作ったのではないからこそ、この事業をやっていこうという高い志と、新事業への挑戦が必要だと気づかされたと言います。そこで、本業の宿泊事業に加え健康食事業と観光事業をスタート。さらにこの3つの事業を掛け算することで生まれたのが「スマートヘルスツーリズム」でした。

スマートヘルスツーリズムへの取り組み

スマートヘルスツーリズムは、参加者のニーズを満たすコンテンツを提供しようという考えから生まれました。

宿泊業界の生産性を上げるために求められているのは成果(付加価値)を増やすこと、という発想から生まれたキーワードが「ヘルスツーリズム」です。旅という非日常の楽しみの中で健康の回復や増進を図るヘルスツーリズムは、企業健康経営の評価項目や公的保険外サービスとして近年認識が高まっていますが、一方で市場規模は伸びない理由を、そもそも旅の楽しみが置き去りされているからだと考えた竹内社長。例えば、ヘルシーフード=減塩味噌汁、アクティビティ=ウォーキングのように、短絡的で魅力が足りなかったり効果が曖昧だったりしていることが原因だと考えました。スマートヘルスツーリズムでは、IoTデバイスを利用して効果を見える化し、見た目もおいしい健康食やスマートフォン音声ガイドを活用したアクティビティなど楽しさを増す工夫がされています。

スマートヘルスツーリズムでできること

また、これまで参加者が集まらないと開催できなかったガイド付きの団体旅行から、音声ガイドで楽しむ個人旅行にも対応できるようになったことで、生産性が2倍以上向上するとともに、健康意識が高まるWithコロナ時代にもフィットする形に。今後は福利厚生やワーケーションと掛け合わせ、さらに付加価値のある商品づくりを目指していきたいと話します。

事業をはじめるときに考えていること

新しい事業を始める時に大切なのは課題から考えないということ。「今はどんなアイディアでも社会的な課題に結びつけることができる。ワクワク感をもって意外性の掛け算をしていくことで、世界が変わるような突き抜けたアイディアを見つけることができる」と竹内社長は言います。

ビジネスモデル変革は組織変革

竹屋旅館では優秀な人材を確保するために業人材の活用にも積極的に取り組んでいます。「外部の人材が組織に新しい風を起こすことで外との掛け算が働く。働きたくなる会社であり続けるために組織を変え『10年後のために今何ができるか』をビジネスモデルに落とし込んでいきたい」と竹内社長は話します。

講師の市谷様からは、「社会的課題を考えるときにアイディアを軸に構成していくというのが印象的」というお話がありました。副業人材の活用によって外部との接点を上手く作る取り組みは参考になる点が多いのではないでしょうか。

Q&A

Q1.副業人材を活用する上での課題は?

竹内社長より

ひとつは業務をどう切り出すかということ。副業人材を活用するとき、その人にはテーブルの向こう側ではなく隣に座ってもらいたい。ですから、単なる業務のアウトソーシングにならないためにも、経営層や上級管理職が悩みの部分から共有し相談しあうことが必要だと思います。ふたつめは副業人材が何を求めているのかということ。副業人材が玉石混淆の今、その人が本当に地域社会のために共感して働きたいのかを見極める必要があります。

Q2.副業人材はどのように探したのか?

竹内社長より

はじめは知り合いに声をかけました。最近では副業人材のマッチングに積極的な企業や行政の支援も活用しています。知らない人に知っていただくために、まずは自分たちの受け入れ態勢を整えた上で、外部の支援機関を活用するのがお勧めです。

Q3.新たなことを始めるときの社員の反応は?

竹内社長より

一割が賛成、三割が無関心、半分くらいが反対でした。反対が多い場合でも、なぜ反対なのか理由を聞くことが大事だと思います。従業員と同じ方向を見ようと努力すること、伝え方を間違えないようにすることは溝を広げないためにも大切だと思います。

Q4.新事業を発想するには?

竹内社長より

目の前にいるお客様に目を向け、人の感情が動くような場面から発想を得ることが多いです。

司会より

ビジネスモデルが確立されているホテル事業の中で、そこから抜け出し差別化しようと考えると定性(物事を数値化できない部分に着目し捉えること)的な領域を見つめることが大事なのですね。そして変革に効果があるかをしっかり検証するために、もう一度定量的なものに目線を戻すような作業をされているように感じました。

竹内社長より

おっしゃる通りですね。定性と定量の両面から見ようとしないと、途中で人の心や大切なものを置き去りにする可能性があると思います。

講師より

良いタイミングで視点を切り替えるのは難しいこと。思いつきで捉えなおすより、あらかじめ大事な視点を並べ照らし合わせながら考えるようにすると、様々な発想が生まれるのではないでしょうか。

個人ワークとディスカッション・全体共有

個人ワークでは、ワークシートを使って事例発表を受けての感想と気づきを自由に記入したあと、ご自身の会社の既存事業について書き出しました。その後のグループワークでは、既存事業とアイデアの掛け合わせについて、グループ共有とディスカッションが行われ、ファシリテーターから全体に共有をしました。

講師より

「新規事業は単に事業同士を掛け合わせるのではなく、自社の強みである技術やリソース、活動などを一つの軸として、そこにどんなテーマやアイデアを掛け合わせるのか、外部の人材や他社との対話を通して見つけていくのが良い方法だと思う。しずおかDXコンソ―シアムのようなコミュニティこそ、外との広い接点になりうる。ここでの出会いや時間をぜひ活用してほしい」

2021年度のワークショップはすべて終了しました。

次回以降の開催予定などの詳細はイベント情報のページにてご確認ください。

 

この記事をシェアする